任意後見制度とは
任意後見制度のしくみ
任意後見制度は、判断能力が衰える前に、判断能力低下後に自分自身の後見人等になる人を自分の意思で指定しておき、その指定した後見人等に自分の財産をどのように管理してもらうかや老後の希望(ライフプラン)を自分で決めておくものです。
上記の後見人等の指定やライフプランの内容は、本人と将来後見人となる人の間で任意後見契約を結んでおくことになります。
この任意後見契約は、公証役場で公正証書で契約書を作成します。そして、任意後見契約を締結した後、本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行い、任意後見監督人が選任されると任意後見契約の効力が生じます。
任意後見契約を結んでおけば、将来判断能力が衰えた後も、自分の信頼する人に後見人になってもらえ、後見人にも自分で決めておいたライフプランや財産管理の仕方に沿って支援をしてもらうことができるのです。
※任意後見契約を結んでおかないで判断能力が衰えたときには、家庭裁判所が後見人等を選任することになるので、自分が望まない人が選任されることもあります。また、裁判所の選任した後見人等の判断で財産管理が進められていくので、自分の希望は実現できなくなるおそれがあります。
※任意後見監督人は、家庭裁判所で専門職を選任し、任意後見人をしっかり監督することになるので、安心して任意後見制度を利用できます。
任意後見制度は、なぜ必要
■老後に判断能力が衰えたとき、自分自身の生活のことを人任せでなく、自分で決めておくことができます。
後見人には、自分の信頼する人になってもらうことができ、人生設計、財産の管理も自分の希望するプランに沿って後見人にやってもらえます。
(具体的には、以下のようなことを決めておけます。)
- 老人ホームに入所する場合には、こんな老人ホームに入りたい
例えば、緑豊かな郊外のホーム。陽当たりのよいホーム。個室のあるホーム。
入りたいホームが決まっていれば、決めておくことも。 - 財産の管理は、こんなふうにして欲しい
- 自分らしい生活を老後も引き続き送れるよう、自分の生きがいとすることにはお金をかけたい。
- こんなことに、これくらいの金額を充ててもらいたい。
- 質素な生活に心がけて、無駄な出費はしないでほしい。
- 介護は必要になったら、自宅を売却して施設に入りたい
- その他、ライフプラン全般にわたり決めておけます。
- 福祉サービスの利用についての希望
- 終末医療の希望
など
■身よりのない方や子どものいないご夫婦の方が安心して将来に備えることができます。
身よりのない方や子どものいないご夫婦の方は、将来の財産管理の道筋や日常生活を支援してもらう人を決めておく必要があります。
その場合には、任意後見制度を利用することが考えられます。
例えば、老人ホームなどの施設に入所する際、身元保証人が必要となります。
身よりのない方などで身元保証人を立てることが出来ない場合には、任意後見人を定めておくことが必要となる施設があります。
任意後見契約の3つのパターン
1 将来型
現在、判断能力に問題なく支援が必要ない場合のパターンです。
「任意後見契約」を締結し、それにあわせ、「見守り契約」も結んでおきます。
※「見守り契約」とは、任意後見人となる人(任意後見受任者)が、本人の判断能力の変化を確認するために、定期的に本人と連絡を取ったり、本人の自宅などを訪問するための契約です。
もし、本人の判断能力が衰えたときには、任意後見人となる人が、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てをすることにより、任意後見の効力が生じることになります。
2 移行型
現在、判断能力に問題はないが、高齢などのために、財産の管理などが大変となってきたため、自分の財産の管理の全部または一部を、今から代わりにやってもらう必要がある場合のパターンです。
何をやってもらうか(どの範囲でやってもらうか)は、自分で決めることになります。
この場合には、「任意後見契約」「見守り契約」にあわせて「財産管理等委任契約(任意代理契約)」も結んでおきます。
※「財産管理等委任契約(任意代理契約)」とは、元気なうちから支援を受けるしくみです。
判断能力などの精神上の問題はないが、病気や高齢のため、身体が思うように動かない、数字や文字を追うのが大変となってきた場合などに代わりにやってもらうものです。
【具体的な利用例】
- 介護福祉サービスの契約や役所などの手続きが不安なので代わりにやって欲しい。
- 日常の金銭管理がうまくできないので、手伝って欲しい。
- 医療費の支払いを代わりにやって欲しい。
- 不動産の管理が自分では困難になってきたので、管理を任せたい。
3 即効型
現在、すでに判断能力が不十分な状態の場合です。
「任意後見契約」を結ぶと同時にすぐに任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申立てをして、「任意後見契約」の効力をすぐに発生させるものです。
※いずれの任意後見契約のパターンでも、任意後見契約時に、「死後事務委任契約」や「遺言」をしておく必要がある場合があります。
本人の死亡とともに、任意後見契約は終了し、任意後見人の役割も終わるため、「死後事務委任契約」によって、死亡後の事務(葬儀、供養など)を行う人を決めておく必要があるためです。
また、死亡後の相続財産を引く継ぐ人を決めるには、「遺言」によることになります。
任意後見制度の手続きの流れ
まず、任意後見制度の内容やしくみをしっかり理解しましょう。
よくわからないことや、心配なことがあれば、専門家に相談をすることも近道です。
任意後見を利用する場合、任意後見の内容をしっかり決めることが必要です。
以下のように、誰に何をやってもらうかを、よく考えたうえで決めます。
- 誰に任意後見人をお願いするか。
- 任意後見人に何をお願いするか。
- 遺言、死後事務委任契約や財産管理契約などの他の制度を任意後見とあわせて利用するか。
任意後見契約を本人と任意後見人となる人の間で締結します。
公証役場で、公正証書によって、任意後見契約を締結します。
判断能力が低下したら、家庭裁判所に、「任意後見監督人選任の申立て」を行います。
「任意後見監督人選任の申立て」が出来るのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人候補者です。なお、本人以外の人が申立てをするのには、本人の同意が必要です。
家庭裁判所により、任意後見監督人が選任され、任意後見制度が開始されます。